想いはそこにある 第4話

【ストレス解消の新習慣】読書が心を癒す理由、知ってる?

プロローグ〜第2話

翌日、慎司は約束どおり、田代優菜と一緒に地元の図書館へと向かった。優菜の案内で辿り着いたのは、図書館の奥まった場所にある「郷土史コーナー」だった。埃をかぶった本棚が並び、訪れる人はほとんどいない。静かな空間に差し込む日差しが、古びた本の表紙を照らしている。

「ここか……雰囲気あるな。」

慎司は周囲を見回しながら感心したように呟いた。

「ここ、みんなあんまり来ないの。でも、昔の町のことを調べるには一番いい場所だよ。」

優菜は慣れた様子で棚を探り、本をいくつか慎司に渡した。

「まずはこれを読んでみて。この町が観光地になる前の話が載ってる。」

慎司は本の表紙を眺めた。『楠木町の変遷』と題されたその本は、しっかりとした装丁ながら、長い間誰の手も触れていないようだった。

町が変わるきっかけ

慎司はページをめくりながら、町の歴史を辿る。そこには、楠木町が長年、農業と林業を中心にした静かな町だったことが記されていた。しかし、ある時期を境に観光業が急成長し、特産品「楠の茶」と「楠の蜜菓子」が町の経済を支える柱となったという記述が目を引いた。

「『特産品の成功は、御神木の力を活用した結果である』……」慎司は声に出して読み上げた。

「御神木の力……?」

優菜は慎司の横で小さく頷いた。

「昔から、御神木には『人々に幸福感を与える』っていう言い伝えがあったの。それを使ってお茶やお菓子を作り始めたのが、今の特産品のきっかけなんだよ。」

「でも、それって本当にただの伝説じゃないのか?」慎司が疑問を投げかける。

「普通ならそう思うよね。でも、実際に特産品を食べた人が『気分が良くなる』って言ってるし。」

慎司は本に目を戻しながら、小さくため息をついた。

「御神木の力……そんなものが本当にあるなら、それはただの伝説じゃ済まないよな。」

セリナの参加

その日の午後、慎司と優菜は図書館での調査を終えた後、セリナと合流した。セリナは慎司たちの様子を見て少し驚いた表情を浮かべた。

「なんか真剣な顔してるけど、二人で何か企んでるの?」

「企んでるって……いや、ちょっと町の歴史を調べてただけだよ。」

慎司が苦笑いを浮かべると、優菜が間髪入れずに言った。

「慎司さん、そんなに謙遜しなくていいよ。御神木の秘密を探ろうとしてるんだから。」

「御神木?」セリナは目を丸くした。

慎司は優菜の言葉に軽く肩をすくめながら、セリナに説明した。図書館で見つけた記録や、御神木が特産品の成功に関わっているという話。そして、自分がこの町に戻ってきてから感じている「違和感」について。

「確かに、この町が観光地化したのって急だったよね。私も気にはなってたけど……そんな裏があったなんて。」

セリナは慎司の話に耳を傾けながら、どこか考え込むような表情をしていた。

優菜の調査ノート

「ねえ、これ見て。」

優菜は自分のノートを開き、慎司とセリナに見せた。そこには御神木の写真や、町の古い写真が丁寧に貼られている。

「これ、全部優菜が撮ったたのか?」慎司が驚いたように尋ねると、優菜は得意げに頷いた。

「うん。御神木の写真って意外と少ないから、自分で記録してるの。」

慎司はノートを眺めながら、一枚のスケッチに目を止めた。それは、御神木の根元にある祠のようなものを描いたものだった。

「これ……何だ?」

「昔から御神木の近くにある祠だよ。でも、今は立ち入り禁止エリアになってるから近づけないんだ。」

セリナがその話に反応した。

「私、その祠の話聞いたことある。確か、町の守り神を祀ってるって。」

「守り神か……でも、なんで立ち入り禁止なんだろうな?」

慎司はスケッチをじっと見つめながら、祠に隠された何かがあるのではないかと感じ始めていた。

セリナの思い

その日の夕方、慎司とセリナは優菜と別れ、町を歩きながら話を続けていた。

「慎司、今の話を聞いて思ったけど……やっぱりこの町、ちょっと変だよね。」

「どういうことだ?」

セリナは少し足を止め、慎司の顔を見た。

「みんな観光客に優しくしてるし、特産品が売れて町は活気づいてる。でも、その裏で地元の人たちはどこか疲れてるように見えるんだよ。」

慎司はセリナの言葉に頷いた。

「俺も同じことを感じてたよ。みんな無理して笑ってるように見える。」

「そうだよね。私たちが子どもの頃の町は、もっとのんびりしてて、みんな自然体だった気がする。でも今は、何かに追われてるみたい。」

慎司はその言葉を胸に刻みながら、自分が感じている違和感が、町全体に影響を及ぼしていることを改めて実感した。

次へのつながり

その夜、慎司は実家の書斎で父親の遺した日記を再び手に取った。日記の中には「御神木の力」「祠」「秘密」という断片的な言葉が散りばめられている。しかし、それが具体的に何を意味するのかはまだ分からない。

「御神木……何が隠されてるんだ?」

慎司はその言葉を呟きながら、明日再び優菜やセリナと一緒に動くことを決意するのだった。

第5話へ 残り11話

コメント

タイトルとURLをコピーしました