因果応報  第2話 積み重なる不満

🌟 人生をより豊かにする8つの原理原則 🌟

「もう無理っすよ、狩峰さんの仕事ばっかり押し付けられて……」

昼休み、西村たちは小さくため息をつきながら話していた。

「ほんとそれ。いつも『やっとけ』の一言で終わりだもんな。」

「そうだよな。アイツ、面倒見がいいとか言うやつもいるけど、俺らには仕事押し付けてるだけだろ。」

机の上に積み重なった資料を見つめながら、誰もが同じ気持ちを抱えていた。狩峰に対する不満が徐々に溜まっていく。

「瀬乃さんに相談してみるか……」

***

<人物紹介>

瀬乃(せの)

かつては狩峰の部下として働いていたが、今は同じ営業企画部の別グループを率いるリーダーの一人だ。

狩峰とは対照的に、柔らかい物腰で部下からも信頼を集めている。

***

「すみません、瀬乃さん……」

休憩時間、狩峰の部下の一人、西村が瀬乃に声をかけた。

「ん? 西村さん、どうしました?」

「狩峰さん、最近ちょっと厳しすぎませんか? なんとかならないっすかね……」

瀬乃は少し考え込みながら、ゆっくりとコーヒーを飲んだ。

「まぁ、あの人なりの考えがあるんじゃないかな?」

「いや、それはわかるんですけど……こっちも限界ですって。」

瀬乃は苦笑しながら、スマホを取り出した。

「わかった。今夜狩峰さんを飲みに誘って話してみるよ。」

***

夜の居酒屋。瀬乃はすでにビールを半分ほど飲み終えていた。

『悪い、ちょっと遅れる。』

スマホの通知を見て、瀬乃は小さく頷く。

「了解しました。っと」

狩峰が店に到着する頃には、瀬乃はのんびりとグラスを回していた。

「悪い、ちょっと仕事片付けてた。」

「狩峰さんが仕事してるなんて珍しいですね。」

「うるせえよ。」

狩峰は軽く笑いながらジョッキを手に取った。

世間話をしながら、瀬乃はふと新人のことを話題に出した。

「新人の様子はどうですか?」

狩峰は少し考え込みながら、ジョッキを口に運ぶ。

「まだまだ、使えねえな。」

「またまた、厳しいっすね。」

瀬乃は笑いながらも、少しだけ真剣な表情になった。

「最近、西村さんたちに仕事押し付けすぎなんじゃないですか?」

狩峰は一瞬、瀬乃の顔を見たが、すぐに視線をそらし、ジョッキの中身を一気に飲み干した。

「……説教かよ。」

瀬乃はポテトをつまみながら、少しトーンを落として言った。

「でも狩峰さん、このままじゃ部下たちの士気下がりますよ。」

狩峰はグラスを回しながら、少しだけ考え込むような素振りを見せた。

「……確かにそうかもな。」

瀬乃は肩をすくめながら、「そのうち痛い目見ますよ」と笑う。

隣の席から笑い声が聞こえてきた。狩峰は軽く息を吐く。

「ま、俺が困ることはねえだろ。」

瀬乃はそれを聞いて、もう何も言わなかった。

狩峰は静かにジョッキを口に運んだ。

***

店を出ると、夜風が心地よく吹いていた。

「遅いし、駅まで送るぞ。」

「大丈夫ですよ。迎えが来てくれているので。」

そう言いながら、瀬乃はスマホを確認する。

「じゃ、狩峰さんも気をつけて帰ってください。」

瀬乃が軽く手を振る。

狩峰はライターの火をつけながら、無造作に手を上げた。

「おう。また明日な。」

紫煙が、夜の街にゆっくりと溶けていった。

第3話

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