想いはそこにある第10話

【ストレス解消の新習慣】読書が心を癒す理由、知ってる?

プロローグ〜第2話

第10話: 儀式の謎

慎司たちは、山奥にひっそりと佇む祠にたどり着いた。周囲の空気は異様なまでに静まり返っており、木々のざわめきすら聞こえない。祠の木製の扉は古びていて、今にも崩れ落ちそうだった。

「ここが祠か……。」

慎司は静かに呟き、手を伸ばして扉を開けた。中からはひんやりとした空気が流れ出し、かすかな湿気を感じる。

「ちょっと待って。これ、本当に入って平気なの?」

セリナが慎司の腕を掴む。彼女の表情には不安が色濃く滲んでいる。

「平気かどうかなんて、入ってみなきゃ分からないだろ。」

慎司は軽く笑ってみせたが、内心では同じように緊張していた。

祠の中の発見

祠の内部は薄暗く、わずかに差し込む光が埃を舞い上げる。壁や床には古い木材が使われており、何十年もの間、手入れされていないことが一目で分かった。

「これは……巻物?」

優菜が指さしたのは、祠の奥に置かれた石板の上に乗っていた古い巻物だった。慎司は慎重にそれを手に取り、ゆっくりと広げた。

巻物には、複雑な文様とともに、儀式の手順が書かれていた。慎司はその文字を目で追いながら、声に出して一部を読み上げた。

『御神木の封印を強化するには、封印者が自らの心を捧げること』

「心を捧げるって……どういうこと?」

セリナが不安げに尋ねる。

「続きを読んでみる。」

慎司はさらに読み進めた。

『最も大切な記憶を捧げることで、御神木の力が安定し、封印が維持される。』

慎司は言葉を失い、巻物に刻まれた文字の意味を噛み締める。

儀式の代償に対する恐れ

「記憶を捧げる……?」

優菜が震える声で口を開く。

「それってつまり、自分の思い出を失うってこと……?」

「そうか……父さんはこの儀式で……」

慎司の呟きに、二人は驚いたように彼を見つめた。

「どういうこと?」

セリナが慎司の顔を覗き込む。

慎司は苦しげな表情を一瞬だけ浮かべたが、すぐに平静を装った。

「おそらく……父さんは十年前、この儀式をして記憶を失った。それで俺のことも、全部……」

慎司の声がかすれた。その言葉を聞いた瞬間、セリナと優菜の表情が凍りついた。

「……だから、この町を出て行ったの?」

セリナが慎重に言葉を選びながら尋ねる。

「……いや、違う。」

慎司は拳を握りしめながら、遠い記憶を辿るように視線を落とした。頭の中にぼんやりとした父の面影が浮かんでは消えていく。

「記憶を失ったんじゃない。……忘れることを選んだんだ。」

その言葉に、セリナと優菜が息を呑む。

「……選んだ……?」

慎司はゆっくりと巻物に視線を戻した。

「父さんは、自分の意志で俺のことを忘れたんだ。御神木を封じるために。きっと、それがこの町を守る唯一の方法だったんだろう。」

その事実を口にした途端、胸の奥が締め付けられるような痛みを感じた。

「……じゃあ、慎司はどうするの?」

優菜の声は、静かだが確かに震えていた。

慎司は答えられなかった。ただ、巻物に記された言葉が、じわじわと彼の意志を試すように重くのしかかってくるのを感じていた。

巻物の最後に記されていた言葉は……。

――『封印は10年ごとに更新する必要がある』――

――儀式を怠ると御神木の力が暴走し、町の人々の記憶を全て吸い取り、やがて町そのものが存在した痕跡すら消えてしまう』――

慎司は心の中で事実を噛み締めたが、表情には出さないように注意を払った。


父さんが失踪してから、明後日でちょうど10年――

次の行動を決める

祠を出た三人は、宮司に見せるために巻物を持ち帰ることにした。しかし、慎司の頭の中では、儀式の代償についての考えが離れない。

「最も大切な記憶を捧げる……。」

第11話につづく 最終話まであと5話

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